No.: 99
Location: 和歌山県串本町 双島沖 ササの根 (双島沖 1 の根)
Condition:
Date:
1994/07/31 (Sun)
Activity:
NAUI AI コース & NAUI ADVANCED SCUBA DIVER アシスト
 波: 1m
 流れ: 無視できる程度
Temperature
Visibility
Bar.
Depth
Time
Instructor (or Dive Leader) Signature:
Air
Surf.
Btm.
Tank
Start
End
SAC
Ave.
Max.
Start
End
Btm.
Total
Diving Spot Triton
32
 
27
 
 
20
10
180
70
12.64
19.0
32.0
10:13
10:43
00:30
:
NAUI #9943 M.S.
BSAC 00-0187C T.N.
m
m
m
bar
bar
ℓ/(barxmin)
m
m
 
 
 
 
 

   

  :  

EAN : %
PO2 :
MOD :
ERD :

   

  :  

Used Diving Computer

PD     

PD+     

(a)MDT     

(a)MDT     

D       

STOP
ANT
ADT
TNT
Name Age Gender Bar. Note
Start End
T さん アドバンス受講中。
M さん female アドバンス受講中。ショップ常連さん。
F さん female アドバンス受講中。ショップ常連さん。
S さん アドバンス受講中。
H さん female アドバンス受講中。ショップ常連さん。耳抜きが苦手。
 
 
 
 
 
 

Notes:

この日、ぼくはアシスタント・インストラクター・コースでの参加、つまりアシスタント・インストラクター候補生としての参加なので、実際のログブックのインストラクター・サインは、ぼくの指導インストラクターである師匠の名前になっている。

だけれども、この週末の現地でのアドバンスの担当は師匠ではなく、BSAC インストラクターのチーフと、NAUI アシスタント・インストラクター候補生のぼくの 2 人になる。師匠はあくまでぼくの評価を担当。

この日はアドバンスの海洋の 2 日目。アドバンスのディープの講習を実施。アドバンスのディープということで、水深 -30m を取れる双島沖ササの根をチョイス。出港前の早朝、船長にあらかじめ目的地にササの根を依頼。

今日のゲストは表の通り。非常に申し訳ないことに T さんと S さんがどんな人だったのか、さっぱり思い出せない。性別さえ記憶してないので、おそらくアドバンスを受講されたあと、店に来なかった人たちだと思われる。ぼくたちの力が足りなかったのか、他のショップに移られたのか、それとも自立心旺盛で早くも自立したダイバーの道を歩まれ始めたのか、理由は定かではない。なにせお店に来られないのでさっぱりわからない。でもうちでアドバンスまで受けたのなら、おそらくご本人とバディは安全に潜れるるはずであり (それだけのことをやっていただいてる)、他店であろうとその先に進まれるであろうし、あまり危惧はしていなかった。

なんてことを書くと、師匠にどやされる。「みんな生活あるやろ!?頑張ってもっと商売っ気を出せ!!」って。まぁそうなんだけど (笑)

M さんと F さんは、高校の同級生で (しかもぼくの出身校と同じ市内なので、割と身近に感じる学校)、職場の保育園で偶然同じ職場になったらしく、ショップにも 2 人で見えられた。オープンの講習の時からいつも仲良く一緒で、他の常連さんからも可愛がられていた。

この日、ディープ講習に合わせて、朝一でオレンジハウスで、軽くディープの注意点と、海洋で何をやるかを復習。そしてササの根がどんなポイントかも軽く説明する。

袋港から船長の船でササの根までクルージング。多少波はあるものの、さほど波が高いわけでもなく、特に不安要素はない。

次々とバックロールでエントリーしていき、ブリーフィングの通り、アンカー・ロープで集合。集合したところで、全員揃って潜降ということになっていた。なっていたのだけれど、バディを組んでいる M さんと F さんが潜降しない。

なにかトラブルでも?と思って「どうしたの?潜降しないの?」と訊いたところ、F さんが「怖い」と一言。F さんもバディの M さんと 、グラスワールドや住崎などのポイントでは、普通に潜れているので、なにか不安を感じるとは思っていなかった。

ササの根は中性浮力さえ取ることができれば、特別難しいポイントではないのだけれど、1994/06/26 のログに書いたように、ササの根はぱっと見ると、なかなか厳つい見た目をしている。

ぼくが最初に思い浮かんだのが、西穂からジャンダルムを経由して奥穂に至る岩稜や、大キレット、滝谷のような、見るからに厳つく人を寄せ付けなさそうに見える岩稜だった。ぼくの場合は、うぉーっ、かっこええ、と興奮してしまったのだけど、あの見た目の厳つさに怖気づいてしまう人もいるのだということは、このとき理解した。

「大丈夫だよ。見た目は怖そうだけど、下に降りたら (グラスワールドとかと) 変わんないよ。どうしても、怖かったら一緒に潜降しよう」

どうしても怖いようであれば、見た目からくる恐怖心が和らぐなら手をつないで潜降してもいいか?とも思っていた。だけどこのタイミングで、ぼくは船長に呼ばれてしまった。船長に呼ばれた理由ははっきりとは覚えてないのだけれど、たしかカレントロープをどうする?ってことだったと思う。ほとんど流れてなかったので「いらないんじゃないですかね?もしぼくらが上がってくる前に流れてたらお願いします」って返事をしたような気がする。記憶があやふやだけど。

水面にはもう全員の姿がなかったので、出遅れた、と思って下を見たら、みんなアンカーロープに掴まりながら潜降しているところだった。よかった、チーフと一緒に普通に潜ってる、大丈夫だったみたい。

ぼくも早くみんなに追いつかないといけないので、ヘッドファーストでガシガシ泳ぎながら、普段やらないバルサルバ法で耳抜きしながら、一気にみんなところに潜降した。

F さんや、その他のゲストを見ていると、皆落ち着いてダイビングをしている。特に問題もなく、このダイビングの目的の -30m まで降りて、またのんびりと浅い水深まで戻って、ファンダイブに近い感覚で潜っていた。一応ぼくらのショップでは、-30m に紙パックのジュースを持って入って、それがどうなるのかというのを自分の手で確かめる、というよくある課題があった。

-30m に持ち込んだジュースを飲んでいいよ、ということになっていたのだけど、そのジュースを海の中で飲んでいたのはチーフだけだった。なんであんたは飲まないの?とチーフに言われたが「いやぁ、実は、ボート、弱いんすよ」と苦笑いして返すぼく。実はこの日のゲスト全員がボートに弱かった。なので実際に水中でジュースを飲んだのはチーフだけだった。

ぼく自身はというと、ゲストに水中で何かを飲み食いするのは勧めていない。

これは生理学的な理由があって、水中で飲み食いすると、やっぱり多少は空気が胃に入ることになる。水中なのに?と思うかも知れないけど、レギュレータで呼吸している以上、口腔から気道まで空気が入っている。しかも食道にたどりつくまでの道のりは、気管や気管支、肺と共用という人間の構造がある。どうしても胃に空気が入ってしまう。浮上中にゲップすればいいのだけれど、それがうまくできずに胃の内容物を吐いてしまう人がいる。

通常講習で海中でゲップをしたり、嘔吐する練習はしない。なので普通に危ない。だから人に勧めないし、見せもしない。ちょっと君は固い、と言われるのだけれど、非推奨のことは見せないほうがいいと、ぼくはやっぱり考えてしまう。

それでこのダイビングでのぼくはというと、アシスタントの実習なので、ゲストのエア残量のチェックや、ゲストに特に問題がないかチェックしてまわっていた。もちろん何か生物を発見したりしたら、チーフやゲストに知らせていた。この 1 本目のダイビングでは、ササの根に入っていたのはぼくたちだけだったので、混雑による迷子がでないようにするための誘導がいらなかったので、ゲストの見守りが中心で、割と楽だった。

ほどなくして、全員でボートにエグジット。ゲストの半数は、ボートに上がってまもなく船酔いでグロッキー状態に。ボートって泊まってると、さほど波が無くても無茶苦茶揺れるので、船酔いでグロッキー状態になる人が続出するのは普通の光景だったりする。ササの根から袋港まで、けっこうな時間がかかるので、絶望感はひとしおだったと思う。

ササの根でのダイビング中は、特になにも問題はなかった。なかったと思っていた。問題が表面化するのは、この日 2 本目のボートが出港しようとするときだった。問題を抱えていたのはササの根のエントリー時にポイントを怖がっていた F さんではなかった。問題を抱えていたのは落ち着いて潜っているように見えていた F さんのバディである M さんの方だった。

つづく