昨日アップした Dive #24: スクーバ・ベイルアウトのあとがきです。Dive #24: スクーバ・ベイルアウト を書いた理由をつらつらと書いていきたいと思います。そう。理由があります。
あのスクーバ・ベイルアウトの手順ですが、気がついてる人も多いと思いますが、NAUI のインストラクター・ハンドブックの特定技能の詳細に書かれたものになります。なので他の指導団体では、手順が少し異なっているかも知れません。
ちょっと NAUI のインストラクター・ハンドブックから、スクーバ・ベイルアウトについて書かれたところを抜粋します。2000 年のインストラクター・ハンドブックから抜粋しますが、該当箇所は 2024 年の改訂版でも変更されていません。
マスク、スノーケル、フィン、ウェイトベルト、スクーバユニットをもって、水深2.4m以上潜る (エアーはバルブを閉めパージしておく)、水底で身を落ち着ける。静かな場所を選び、機材を着用する。このプロセス中ダイバーは、すべての装置をコントロールし、手放さないようにする。着用終了後、普通の浮上をおこない、BC、スノーケル、スクーバなどは用いずに、5分間水面で立泳ぎをする。
実はインストラクター・ハンドブックには、スクーバ・ベイルアウトに関する記述は、この手順の説明しかありません。
NAUI の ITC を受ければわかりますが、NAUI の講習では、必ずなぜそのスキルをやるのか、つまりスキルの目的、それとそのスキルをどれくらいのレベルで、できればいいのか、つまりスキル実施の目標を明確にせよ、と口酸っぱく言われます。
振り返ってみると、ダイブマスターコースやアシスタントインストラクターコース、そしてインストラクターを認定する ITC でも、なぜスクーバ・ベイルアウトをやるのか、説明を受けた人はいないのではないでしょうか。おそらく多くの人が、業務の中でも、なぜスクーバ・ベイルアウトをやるのか説明を受けた人はごく少数のはずです。
わたしはこれまでのダイビング歴で、スクーバ・ベイルアウトの目的の説明を受けたことも、議論をしたこともありません。ただ、達成目標と手順だけが口頭で示される、という状況でした。しかもそれは今でも変わっていない。
始めてスクーバ・ベイルアウトを行うとき、やはりなぜそれをするのか、そしてどこまですればいいのか、それをどういう手順ですればいいのか、また行うときの安全上の配慮点はなにか、そういったことを明文化する必要性を、実は 20 年以上前から考えていました。
もしかするとインストラクター・ハンドブック以外の文献、あの辞書より分厚い A4 の巨大なワープロ専用機で打たれたバインダーのどこかに、記述があるのかもしれません。ですがあのバインダーはあまりに整理されておらず、情報に達するのにアクセスが悪すぎます。
少なくともわたしはインストラクター・ハンドブック以外の記載を見つけることはできませんでした。探し方が足りないと叱責されるかも知れませんけど。
そんなこともあり、もう少しスクーバ・ベイルアウトについて、なぜそれをするのか、どれくらい達成すればいいのか、手順の詳細はどうなのか、また安全上の配慮事項はなにか、ということを整理して提示したくなりました。
それをわたしの言葉で語ってもよかったのですが、わたしに語らせると、やたらと先人のレジェンドのインストラクターたちを強く批判してしまうということにもなってしまいます。
それはわたしが望むことではないので、終始おだやかに話す架空の人物であるインストラクターちゃんに、いろいろ整理して受講生に語るという形で説明してもらいました。
もちろん彼女に語らせた内容は、これまで文書化されたことがありません。NAUI の基本方針である、とは明言できないということもありますし、NAUI のインストラクター、ダイブマスター、アシスタント・インストラクターに同意できない内容である可能性も強くあります。
彼女の語らせたことが正解であるなどと主張する気も、さらさらありません。逆に前回書いた内容をたたき台にして、職場などで議論してもらえるきっかけになれば幸いです。
NAUI はその設立の経緯から、車のハンドルにアソビがあるように、コース基準にも各インストラクターの裁量が他の団体より多めに設定されています。ですが、やはり他の団体のように明文化した方がいいことはいいと思うのです。
そんな想いもあって、前回の Dive #24: スクーバ・ベイルアウト を書かせてもらいました。もしあのエピソードがみなさんのより良いダイバー養成、支援のきっかけの一つになれば幸いです。
インストラクターちゃんシリーズ内のエピソードは、あくまで架空のエピソードです。登場人物も全て架空の人物です。実在する潜水指導団体、ダイビングショップ、ダイビングサービス、ショップオーナー、インストラクター、ダイブマスター、アシスタントインストラクター、ダイバー、新婚夫婦とは一切関係がありません。ご注意ください。