私は知っている。
どれだけ、仕事ができるインストラクターであっても、女性であれば画像のようなシチュエーションに、強い憧れを抱いていることを。
師匠のおごりで、スタッフの飲み会が行われたときに、まぁのろけられるわけです。新婚だし(笑)
そのときに彼女の口から、一緒に潜って彼にエスコートしてもらうんだぁ、との一言が。
そのとき一緒に飲んでいたスタッフ全員から一斉に、絶対ムリ!!と笑いながらの総ツッコミが。
これはなんでかというと、インストラクターをそれなりの期間やっている彼女の、インストラクターとしての高いレベルは当然全員知ってて、ショップを切り盛りする手腕も間近に見ているわけで、みんな仕事上彼女から多くを学んでいたし、ご主人は、もともとノンダイバーで、2 ヶ月前にオープンを終えたばかり。それはさすがに無理、エスコートするのは、〇〇さんの側だよぉ、って全員笑っていたわけです。
でも新婚さんで、しあわせそうでした。
とはいえ、外部からはレジャー産業のようにしか見えない (もちろんレジャー産業でもあるんだけど) 仕事に従事する人間は、外部から見ると遊んでいるようにしか見えないらしく、結局彼女は、わたしや師匠が危惧していたように、ご主人に仕事をやめるように説得されて、職場を去っていくことになります。
この仕事をやめたくない、ってお客さんのいないときに、わたしの横で泣いてる先輩インストラクターに、自分にはなんて声をかけたらいいのかわかりませんでした。
彼女が職場を去って数カ月後、街の中で、たまたま会ったときに「保険のおばちゃん、やってんねん」と少しさみしそうに笑ったときに、やはり少し、いやだいぶ悲しい気持ちになったことを思い出します。なんでダイビングのインストラクターが仕事ではだめなんだろう、って。
もちろん、それでも幸せに暮らしてらっしゃるなら、それでいいことですし、やはり人生の歩み方は自分で決めるものですから、家族でもない人間が口出しできるようなことでもありません。でもやっぱり思ってしまうんです。また同じことを書いてしまうのですが、どうしてダイビングのインストラクターが仕事ではだめなんだろう、って。
ショップ・オーナー・レベルの人でも、家族との認識にずれに苦労されるらしく、いろんなショップのオーナーや店長レベルの人にも、いろいろ話を聞く機会がたくさんあったのですが、自分も開業しようと思っていると口にすると、決まって反対されたり忠告されたりしました。やめとけって。絶対家族に理解されないからって。全員にです。
実はダイビングの仕事をしているってことは、会社で働くサラリーマンの人たちと、そんなに仕事としては変わらなかったりします。
普通の会社だと企業規模にもよりますが、経理があり、総務があって、企画、営業、開発、製造、購買など、様々な部署があって、それぞれに専門性を持った人たちが、それぞれの部署でその専門性を発揮して働いています。
わたしたちがサラリーマンの人たちと違うのは、ダイビングショップというのは、やはり経営資源に乏しい、一人ひとりのマンパワーに依存せざるを得ない零細経営なわけです。ダイビングショップのスタッフというのは、一般の企業だと細かく分化して、多くの人に分かれて高度に専門化されて担われているたくさんの仕事を、それぞれのスタッフが全て背負ってやっていたりします。
ですからお客さんが目にするスタッフの仕事ぶりというのは、ほんのわずかな部分なんです。でもそれは普通お見せすることはありませんし、そもそもそれを見てもらうのはなにか違う。だって、わたしたちは皆さんを笑顔にするために仕事をしているわけですから。
そういうバックヤードの話はするな、と同業の方々にお叱りを受けそうですし、お客さんに知ってもらいたいとは露ほども思いませんが (というかあまりお見せたしたくない)、でもご家族にだけは知っていてほしいのです。お客さんを笑顔にしてダイバーとして成長してもらうために、わたしたちは、日々、でき得ること全てに全力を傾けて仕事をしているのだということは。
それは、あなたのご主人、奥さん、恋人、あるいは婚約者かも知れません。他の職業同様、皆さん真面目に懸命に働いているのです。
どうかご家族だけはその点、理解してあげてください。一般サラリーマンの方と比べて収入が著しく低いのは、ほんと申し訳ありません。でも収入が低いのも、誰も悪くはないのです。