これは SNS なんかで、あまり話さないほうがいいと思うのでこちらに書きます。多少生臭い話でもあるのですが、話しておいた方がいいかなと思うので、話しておきます。これだけはどうしても困るというタイプのお客さんの話です。
めったにないことなので、最初は声をかけられた自分自身でなんとか対応しようと思うのですが、あまりにそれを繰り返されると、お客さんに楽しんでもらいながら、安全に潜れるダイバーとして成長してもらうという、私たちの最大の目的が阻害されてしまいますので、これは自分では無理だわ、と判断した場合は最終的にオーナーに相談するということになります。
最初、たいていその人の話は、ダイビングってお金かかるよね、ってよくある話から始まります。
師匠のもとで働くスタッフの少なくない人数は、実はもともとは師匠の顧客だったりします。ショップの常連になって店に足繁く通ううちに、師匠やスタッフがやるべき仕事をして、お客さんを笑顔にして、ダイバーとして成長するように促しているのを、最初は客としてですが、いやでも間近に見るようになります。
その中からの何人かが、この人たちのようになりたい、この人たちの仲間に加わって (もちろん同じ職場とは限りませんが)、同じようにお客さんを笑顔にして、ダイバーとして成長できるようにサポートできるようになりたい、と願い始めている自分を発見したりします。自分もその中の 1 人でした。とはいってももちろん動機は皆さん様々ですけど。
でも今言ったことは自分を含めて、多くの人が考えるようになるようです。ちょっと徒弟制度っぽい雰囲気が出てしまうのですが、師匠やそのスタッフの働く姿を見ていいてその世界に飛び込もうと決心すると、プロになるべくそのまま師匠の門戸を叩くことになるのです。
ですけれど、そのことは人にお話することでもないので「スタッフになったのって、タダで潜れるからでしょ!?」って中にはおっしゃる方もいらっしゃるわけです。
客の立場であったときから仕事のキツさはどうしたって見えるので、私たちがそんなことを思っているはずはないのですが、そうだとは思っていただけない。やはりスタッフは客の金で遊んでると思われやすいという、最初の厳しい洗礼をいつかどこかのタイミングで受けることになります。
もう絶対そうに決まってるという確信を持って発言されている、といいますか、それに間違いないことだとなぜか確信されいるので、それを覆しようがなかったりすることが、頻度は多くはないものの、先日まで同じ常連という立場だった人に言われることが、少なくありませんでした。
それだけならいいのですが、お金がかかりすぎるという話をする人って、なぜか決まって師匠の目が離れた瞬間に、スタッフに「私たちと個人で行けば安く潜れるから一緒に行こう」って言い出します。
これって本当に困ります。
といったことをいろいろオブラートに包みながらお話させていただくのですが、なかなかご理解いただけない。
ご理解いただけないだけでなく、言葉の端々に、私たちを無料で便利に使える運転手やガイドとして私的に利用しようとしているのが、わりとあからさまに読み取れてしまったりします。あぁ、この人って実は他人を無料で使える自分のための便利な道具として利用しようとする人だったんだな、とわかってしまったりします。
こういったお客さんの存在は、たとえその人が常連さんであっても、スタッフ間で共有されます。巻き込まれると大変だからです。そっちにも話が行くかもしれないから気をつけろ、って感じで共有されます。
なぜ気をつけろなのかというと、そういうお客さんはスタッフだけでなく、常連さんにも必ず同じことを持ちかけ始めます。やっぱり他人を無料で使える便利な自分のための道具として使おうとするのです。
するとどうなるかというと、プロショップとして、これまでみんなが必死に働いて築き上げてきた、お客さんの成長のための環境が、いとも簡単に壊されてしまうのです。
それと単純に他の常連さんから苦情が入るようになる、というのもあります。スタッフが困るだけならともかく、常連さんから苦情が入るようになるとなると、かなり事情が違ってきます。そうなるともう、いくらお客さんとはいえ放置はできなくなるのです。
スタッフの力で説得できない場合は、最終的にオーナーに相談する、ということになってしまいます。お前らがどう対処するかずっと視てた、しゃーないから俺が説得するわ、と言って、オーナーは腰をあげて、スタッフが気が付かないうちにそのお客さんと話していたようです。スタッフには見せたくなかったのかもしれません。
そのお客さんは遠からずお店に顔を出さなくというか、常連さんからも総スカンをさすがに食うので、お店に顔を出せなくなってしまうのですが、しばらくしてネットなどに店の悪評などを書いているのを発見すると、やっぱり私たちの力が足りなかったと、スタッフの間には無力感がやっぱり漂ってしまうのです。
元気の無いスタッフを尻目に師匠は、しゃーないよ、客商売だし、たまにああいう人が来たりすることはどうしてもある、それより迷惑をかけた、他のお客さんのフローアップをしっかりやれ、と私たちにハッパをかけてカンファレンスと言うかミーティングはお開きになります。
そういったお客さんだった人がどうなっているのか、もし事故を起こしていたらどうしようと、私たちも気にならないわけではないのですが、ときどき他店のオーナーからオーナー宛に電話がかかってきて、なにやら話し込んでいるのでいて、ときおり、あぁ、その人、そっちに行きましたか、とか聞こえたりすることがあるので、あぁ、あの人、他のプロショップでも同じことをやってるんだ、とちょっと悲しくなってしまったりします。
師匠はなるべくスタッフに聞かせない方がいい電話は、子機を持って道路で話すという習慣があるので、その内容を正確に知るすべはなかったのですが、〇〇さん、〇〇でおんなじことやっとるで、と訊いてないのに報告してくれたりすることもありました (苦笑)
当然他店でも居場所はなくなるので、最終的に業界全体どころかダイバー全体の悪評をネットなどで立てるようになることが多いようです。今で言う陰謀論者のような発言が増えていくので、なかなかやるせない気持ちになってしまいます。
師匠は、見るのは止めんが、見た瞬間から忘れろ、忘れられないなら見るな、と我々に忠告していました。師匠だって傷ついていることは、言葉の端々からうかがえるので、やっぱり私たちだけのことだけでなく、師匠や、当の本人のことも考えると悲しいわけです。
そんなお客さんであっても、私たちのお店に来なくなっても、いろんな人から疎まれて行き場所がなくなっていたとしても、事故を起こすことなく、ダイビングだけは続けてるといいなぁ、と思うのです。