ダイバーのための IPE/IPO 対策

⚠️ 潜む危険:

浸水性肺水腫 (IPE/IPO) から
ダイバーを守る

ガイド、インストラクター、
そしてダイバーへ

~ 予防と緊急時の行動指針 ~

IPE/IPO とは何か?

💧 Immersion Pulmonary Edema

💧 Immersion Pulmonary Oedema

浸水性肺水腫

浸漬性肺水腫

  • 「水に浸かること」によって引き起こされる肺水腫
  • 水中での体幹への血液集中、寒冷、激しい運動などが原因で肺の毛細血管内圧が上昇し、肺に血漿けっしょうが漏れ出す病態。
  • 呼吸困難 (ピンク色の泡状の痰)、胸の圧迫感が主症状。
  • 重症化すると意識消失溺水につながる。

📰 "IPO is a major cause of death in scuba divers." (BJAED, 2021)

多くの「溺水事故」は、
この IPE/IPO が先行している
可能性が指摘されています。

🛑 IPE の主要なリスク要因

要因カテゴリーリスク要因具体的行動/状態
生体要因基礎疾患高血圧、心疾患 (特に左心機能低下)、糖尿病など
 年齢・体質40歳以上、過去のIPE既往 (再発リスクが高い)
環境・行動寒冷水温に見合わない保温不足
 過剰な水分摂取ダイビング直前の「がぶ飲み」 (プレハイドレーション)
 運動強度激しい運動、無理な泳ぎ (流れへの対抗など)
装備・呼吸陰圧呼吸きつすぎるスーツ/BCD、レギュレーターの吸気抵抗増大

最も危険な組み合わせ

  • 高血圧
  • 冷水
  • 激しい運動
  • 直前の過剰な水分摂取

🛡️ ダイバー本人の行動指針

【潜水前】

  • 健康チェック: 持病 (高血圧等) の管理と医師の許可を再確認。
  • 水分補給: 喉が渇いたら少しずつ。直前の大量摂取は避ける。
  • 装備確認: スーツや BCDが 胸郭を圧迫しすぎていないか確認。

【潜水中】

  • 運動量を制限: 余裕を持ったペースで泳ぐ。息切れを感じたら即座に活動停止。
  • 自己モニタリング: 「いつもと違う息苦しさ」軽い咳胸の圧迫感を絶対に我慢しない。

🚨 緊急時の行動

1. 認知と伝達 (ダイバー)

  • 症状を感じたら、すぐにバディまたはガイドに明確に伝える
  • ハンドシグナル「体調が悪い」を出す。
「体調が悪い」のハンドシグナル

2. 浮上とエキジット
(バディ/ガイドと連携)

  • 直ちに潜水を中止し、安全を確保しながら水面へ浮上する。
    • ※ 水から出ること (エキジット) が最優先
  • 浮上中はダイバーを絶対に一人にしない (意識消失の可能性があるため)。

3. 陸上での処置

  • 安静: 陸に上げたら座らせて (意識がある場合)、安静にさせる。
  • 保温: 体を温める (寒冷による血管収縮を軽減)。
  • 酸素: 100% 酸素を投与する。
  • 医療: 直ちに救急車を要請し、医療機関を受診させる。

📣 ガイド・インストラクターへの要請

1. 事前ブリーフィングでの徹底

  • IPE のリスクを明確に伝え、特に高血圧や高齢のゲストへ注意喚起する。
  • 直前の過剰な水分摂取を控えるよう指導する。

2. 潜水中の注意深い観察

  • フィンキックが激しい呼吸が荒いダイバーを特に警戒する。
  • 異変のサイン (咳、不自然な呼吸) を見逃さない。

3. 緊急時の適切な処置

  • IPE を疑う症状が出た場合、パニックへの対応ではなく、IPE 対応として迅速なエキジットと酸素投与を最優先で実施する。

⚠️すべてのダイバーに⚠️

  • 周囲に忖度そんたくして頑張ってはいけません。
  • 「早期のエキジット」が命を救います。