エンジョイ勢でい続けたいなら、戦略とか勝ち方とかの情報はシャットアウトしなさい、CPU との対戦もやめなさい、というお話です。
手軽に場所を取らずに場所も問わずにカルカソンヌをプレイするのには PC、Android、iPhone 版カルカソンヌを選ぶのは悪くなさげ……と言いたいところですが、ポチる前にちょっと立ち止まってください。
ちょっとした空き時間にカルカソンヌを楽しみたい、気軽に他のビデオゲームのように軽くエンジョイしたい、という場合にスマホや PC 版のカルカソンヌを選びがちですが、そのような目的でカルカソンヌのアプリを購入すると 100% 後悔します。
そういった楽しみ方をする場合、普通は対戦相手として CPU を選ぶと思いますが、カルカソンヌのアプリの CPU はどれもがプレイヤーの気持ちが砕け散るほどに勝ちに来ます。具体的には、まるでトーナメント出場者のように CPU は振る舞い、情け容赦なくプレイヤー側の地形を殺し、プレイヤーのミープルを殺しにもきます。
カルカソンヌを始めようとする普通の人だと、なにこれ!?こんなの勝てねぇーよ!!とスマホや PC を窓から投げ捨てたくなることを、私が保証します。
CPU に勝とうと思うと、競技カルカソンヌのプレイスタイルをある程度学んで経験もつむ必要が有ります。CPU が競技式のガチンコ勝負をしかけてくるので、こちらも競技式のガチンコ勝負をしかけないと 100% 負けます。つまり CPU 側の地形を殺し、CPU 側のミープルを殺すようなプレイもしないと 100% CPU に負けます。理由は知りませんが、どのアプリもそういう風に作られています。
仮に CPU に負けないためのプレイスタイルを身に着けたとします。それはまさしく競技カルカソンヌのプレイスタイルなのですが、そのプレイスタイルはまるで自転車の乗り方を覚えたかのように、頭だけではなく体にまで染み付いてしまうので、一度身につけてしまうと、そのプレイスタイルでしかカルカソンヌをプレイできなくなってしまいます。
対戦相手のプレイでこれを放置すると自分の大量失点になるとわかっている相手の手を、あなたはあえて放置できるでしょうか?また、このような手を打つと対戦相手が不利になるとはっきりわかってしまっている手を、あなたは打たずに済ませることができるでしょうか。
あるいはある種類のタイルがもう山に残ってないことがはっきりしているときに、対戦相手がそのタイルを必要とするプレイをしようとして、対戦相手がそのプレイをやめたらあなたが不利になる場合、あなたはその対戦相手のプレイを制止できますか。
あなたは先まで見えてしまったプレイを見えなかったことにできますか?
CPU との対戦は競技的プレイスタイルを身につけるための格好の教材になります。そして前述のように一度身についてしまった競技的プレイスタイルは体にまで染み付くので、忘れることはできません。単にファミリーゲームやパーティーゲームとしてカルカソンヌを楽しみたいプレイヤーと対戦すると、あなたのプレイは相手を怒らせずにすませることができるでしょうか。
あなたのプレイは、かつてあなたが CPU に対して怒りの感情を撒き散らせてしまったように、対戦相手を非常に怒らせてしまい、人間関係が険悪なものになる可能性すらあります。
CPU との対戦は、そのような対戦相手を怒らせてしまうようなプレイスタイルを身につける助けになってしまいます。そのためにアプリをポチる前にちょっと立ち止まってくださいと書いています。
ちょっとした空き時間にカルカソンヌを楽しみたいだけなら、まずはボードゲーム本体の購入を検討してみてください。カルカソンヌのパブリッシャーが無料で公式ソロ・バリアント・ルールを公開しています。ソロ・バリアント・ルールを日本語に翻訳している人もいます (私も日本語に翻訳していますが、かなりデザイン的にも本家のルールブックに寄せているので著作権的に公開できません)。
ソロ・バリアント・ルールでは対戦相手がいません。完全ソリティア・ゲームです。競技的な対戦技術の向上はほとんど見込めませんが、パズルゲームのように楽しめますし、身につけなくていい (のなら) 競技カルカソンヌのプレイスタイルとは無縁でいられます。
競技的プレイスタイルを身に着けずにアプリ版を利用したいのなら CPU との対戦は避けましょう。まず最初に一緒にカルカソンヌを楽しみたい人を見つけましょう。家族でも友人でもかまいません。その人とオンラインかホットシートモードでプレイしましょう。相手も自分も競技志向でなければ、普通のゲームとして楽しみ続けることができると思います。
でもエンジョイ勢でずっといたいのなら、アプリではなく対戦相手と顔を突き合わせながら、実物のタイルとミープルを自分の指で置いて、ワイワイとおしゃべりしながらプレイすることをお勧めします。プレイ人数もタイマンではなく 3 人以上、できれば 4 人以上でプレイするほうがエンジョイできると思います。ドラゴン拡張なんかを追加すると、タイルの上が阿鼻叫喚の地獄絵図になるので、楽しみもさらに増えると思います。
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